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高齢者が痩せる原因と対策 ― 「粗食が健康」は高齢期には当てはまらない?

執筆者の写真: 株式会社ネクスト 編集部
株式会社ネクスト 編集部
11 時間前
読了時間: 5分

執筆:稲山 未来(管理栄養士)

これまで体重が変わらなかったのに、年齢を重ねるにつれて少しずつ体重が減ってきている――。そんな方を見たことはありませんか。また、「近所の〇〇さん、最近どうも痩せたみたいだけど、食事がとれていないのかしら」と心配したこともあるかもしれません。

ここでは、痩せてしまうことが高齢者の体にどのような悪影響を及ぼすのか、そして痩せる原因と対策をお伝えします。

痩せてしまうことによる弊害

現在、自宅で生活している65歳以上の高齢者の約1〜2割が痩せ傾向にある、という研究結果が出ています。

痩せの目安は、身長と体重のバランスを示すBMIが20以下とされています。BMIは数値が小さければ痩せ傾向、大きければ肥満傾向を示します。BMI20がどのくらいかというと、身長160cmの方では体重51kgです。つまり、身長160cmの方が51kg以下になると「痩せている」状態ということになります。

BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算できます。ご自身の体のバランスを確認してみましょう。

痩せてしまうということは、体の中の栄養が足りていないということです。体を動かすためのエネルギーが食事から十分にとれていないため、これまで蓄えてきた脂肪や筋肉を使ってエネルギーをつくり出している状態といえます。

その結果、体は常に栄養不足の状態になり、まず免疫力が落ちてきます。感染症にかかりやすくなるため、風邪をひくことが増えたり、よく耳にする「誤嚥性肺炎」も重症化しやすくなったりします。

それだけではありません。栄養不足が続くほど脂肪や筋肉からエネルギーをつくり出すため、筋肉量が落ちていきます。体を動かすのがおっくうになったり、素早く動けなくなって転ぶことが増えたりするでしょう。

食べ物を飲み込むためののどの機能も、その多くは筋肉でできています。飲み込むための筋肉が落ちることでむせることが増え、飲み込むことに障害を抱えた「嚥下障害」の状態にもなるのです。

では、なぜこれほど多くの高齢者が栄養不足になってしまうのでしょうか。

痩せる原因と対策

1. 食べたいのに食べられない

たとえば、むし歯や歯周病で歯が抜けて、残っている健康な歯が少なくなると、野菜などの繊維の多いものや、肉などの歯ごたえのある食品が食べにくくなります。その結果、「食べたいのに硬くて食べられない」という状況になります。食べにくいものが増えるほど栄養は偏り、十分な栄養もとりにくくなるのです。

そんなときは、まず歯科医院で、失った噛む機能を取り戻すための治療を受けましょう。もちろん、そうならないための予防も大切なので、定期的な歯科検診も受けたいですね。

食べられない原因はそれだけではありません。体を動かす機会が減ったり、横になっている時間が増えたりすると、どうしてもおなかが空きませんよね。だからといって食事の量が減ってしまうと、どんどん体力が落ちて動けなくなってしまいます。これでは悪循環なので、少しでも体を動かしながら食事をとるようにしましょう。

また、「摂食嚥下障害」といって、噛むこと・飲み込むことに障害がある方は、まさに食べたい気持ちはあるのに、食べるための体の機能が追いつかない状態です。機能が落ちているにもかかわらず今までと同じ食事をしていると、窒息や誤嚥の危険もあります。

むせ込みが続く、飲み込むときにつかえる感じがするなど、食べることに違和感があるときは、歯科医師に相談してみることが大切です。

2. 食べているつもりでも、栄養がとれていない

なんとなく食欲がわかないときは、私たちもさっぱりと、さらっと食べられるものを選びがちですね。しかし、さっぱり食べられるものは、その分栄養が少ないことが多いのです。たとえば、食欲がないときにそうめんばかり食べていると、栄養が偏ってしまいます。めんつゆをごまだれに変えるだけでカロリーは上がりますし、ツナや錦糸卵をトッピングすれば、たんぱく質も一緒にとることができます。

「おなかがいっぱいになったから、十分な栄養がとれているだろう」ではなく、どれくらい栄養がとれているかを考えてみましょう。

3. 「粗食が体に良い」と思っている

若くて働き盛りのころは、「食べすぎは肥満につながる」「油っぽいものは生活習慣病のもとになるので控えましょう」と言われてきましたね。実はこの考え方は、高齢者には当てはまらないことがあるのです。

なぜなら、年齢を重ねるにつれて、栄養を体に取り込む消化吸収の機能も落ちていくからです。ですから「油ものを食べてはダメ」ではなく、効率よくエネルギーを体に取り込むために、油も上手に活用しなければならないのです。

毎日の食卓の煮物や和え物を、炒め物やドレッシング和えに変えるだけでもカロリーが上がります。たくさんの量を食べられないときは、少ない量でもしっかりカロリーをとれる工夫が必要です。

最近は、べたつきが少なく胃もたれしにくいMCTオイル(中鎖脂肪酸油)なども販売されているので、試してみてはいかがでしょうか。

健康のために続けてきたはずの粗食の習慣が、年齢とともに栄養不足を招かないよう、栄養のとり方を見直すことも必要です。なお、糖尿病や脂質異常症などで食事制限のある方は、主治医や管理栄養士の指示に従ってください。

痩せないために、効率的な栄養摂取を

先にもお話ししたとおり、高齢者にとって体重が減り、筋肉が落ちることには多くの弊害があります。足腰が弱くなって活動の幅が狭くなる、免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなる、のどの筋肉が落ちて食べること・飲み込むことに障害を抱えてしまう、などです。

いわば高齢期においては、体重が増えることよりも、減ることのほうが健康上のリスクは高いのです。

まずはご自身の食生活を見つめ直し、なぜ痩せてしまうのか、その原因をしっかり考えましょう。そして、一度落ちた筋肉はなかなか元に戻りません。体重の減少に気づいたら、早めの対策が必要です。

何をしたらよいか分からないときは、かかりつけの医師や管理栄養士に相談してみましょう。

執筆者 稲山 未来(管理栄養士)

※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。

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