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食べられなくなったとき、どうしますか? ― 経管栄養・点滴・「何もしない」という選択

執筆者の写真: 株式会社ネクスト 編集部
株式会社ネクスト 編集部
11 時間前
読了時間: 6分

執筆:増田 翼(看護師)

「明日地球がなくなるとしたら、最後に何を食べたい?」

こんな会話をしたことはありませんか。

私なら、もし明日地球がなくなるのであれば、お寿司を(しかも普段は食べられない高級なものを)思う存分楽しみたいです。

しかし、誰もが人生の最後に好きなものを食べられるとは限りません。これは「人生の最後がいつ訪れるかわからない」という意味ではありません。病気や加齢によって好きなものが食べられなくなり、最期の時が近づくと、口から食べる力そのものがなくなってしまうことがあるからです。

体の自由を奪う病気や、がん、認知症などによって口から食べることが難しくなると、生きる楽しみも奪われてしまいます。

それでも、ガソリンがなければ車が動かないように、人間も生きるためには栄養をとり、エネルギーを体に取り込まなくてはいけません。

では、口から食べられなくなったとき、どのように栄養をとっていけばよいのでしょうか。それとも「口から食べられなくなったら人生の終わり」と割り切り、何もしないのがよいのでしょうか。今回は、その選択肢についてお話しします。

食べられないときの選択肢は大きく3つ

口から食べられなくなったときの選択肢は、大きく次の3つです。

  1. 経管栄養

  2. 点滴

  3. 何もしない

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1. 経管栄養

経管栄養とは、管(チューブ)を体の中に通し、そこから栄養剤を入れる方法です。「胃ろう」という言葉は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

胃ろうは、おなか(みぞおちの下あたり)に小さな穴をあけ、そこから胃に管を通して、栄養剤やミキサーにかけた食事を注入する方法です。

そのほかの経管栄養には、経鼻胃管などの方法があります。経鼻胃管は、鼻の穴から胃まで届く長い管を入れ、そこから栄養を注入する方法です。

胃ろうをつくるには病院での手術が必要ですが、経鼻胃管は鼻から管を入れるため、在宅でも実施することができます。

私も経鼻胃管を入れたことがありますが、管がのどを通るときの不快感は強いものです。ただ、時間が経つと刺激に慣れてきます。

胃ろうのメリット・デメリット

メリット

  • 胃や腸を使うため、栄養のとり方が生理的で、体への負担が少ない

  • 栄養剤によっては、短時間で注入できるものもある

  • のどに管がないので口から食事をとりやすく、口から食べて不足する栄養を補う目的でも使える

デメリット

  • 手術が必要

  • 1日に数回の注入が必要

  • 胃ろうの周りが赤くなったりジュクジュクしたりと、皮膚のトラブルが起きやすい

  • 定期的な交換が必要

経鼻胃管のメリット・デメリット

メリット

  • 自宅でも挿入することができる

  • 胃ろうと同じように生理的で、体への負担が少ない

  • 不要になったらすぐに抜ける

デメリット

  • 胃ろうと比べて、胃から逆流する可能性が高い

  • 注入に時間がかかることがある

  • のどに管が通っているため、食事が食べにくい

  • 1日に数回の注入が必要

  • 定期的な交換が必要

2. 点滴

病院で点滴を受けた経験のある方もいると思います。短期間であれば、腕などの細い血管に針を刺して栄養剤を入れる方法がとられます。これを末梢静脈栄養といいます。

末梢静脈栄養は細い血管を使うため、たくさんの栄養を投与することができません。

長期間にわたる場合や、多くの栄養を投与したい場合は、中心静脈栄養という方法になります。胸のあたりの皮膚の下に「ポート」と呼ばれる点滴の差し込み口を埋め込み、そこから体の中心に近い太い血管まで管を入れることで、高カロリーの栄養を投与することができます。

また、別の方法として皮下点滴があります。血管ではなく、おなかや太ももの皮下に細い針を刺して点滴をする方法です。

末梢静脈栄養のメリット・デメリット

メリット

  • 自宅でも点滴をすることができる

  • 胃ろうや中心静脈栄養と比べて、手術の必要がない

デメリット

  • 十分な栄養を投与することは難しい

  • 点滴が漏れると刺し直しが必要なうえ、短い間隔での差し替えも必要

  • だんだんと点滴を入れる血管が確保しにくくなる

中心静脈栄養のメリット・デメリット

メリット

  • 高カロリーの栄養を投与することができる

  • 点滴漏れの心配が少ない

  • 点滴の交換は1日1回程度で済む

デメリット

  • 病院での手術が必要

  • 感染症を起こすと、病院で抜去する必要がある

皮下点滴のメリット・デメリット

メリット

  • 血管に刺さないため、何度も刺し直されることが少ない

  • 自宅ですぐに始められる

デメリット

  • 栄養はほとんどとれない(ある程度の水分補給は可能)

3. 何もしない

3つ目の選択肢は「何もしない」です。

前述のとおり、徐々に進行していく病気では、いずれ口から食べることが難しくなります。

なぜ「何もしない」を選ぶのでしょうか。胃ろうや中心静脈栄養は、病院で麻酔をかけて行う処置が必要です。栄養がとれるメリットと、処置にともなうデメリットを比べたとき、病気が治らないのであれば、それを自然な経過と受け止める考え方もあります。「これ以上つらいことはしたくない」「痛い思いをしてほしくない」という本人や家族の価値観を大切にした結果、何もしないという選択をされる方もいます。

何を優先するか

どの栄養法を選ぶかは、その後の人生に大きく関わります。

少し前には「胃ろうは本人の意思を無視して延命させる悪だ」といった否定的な論調が広がったこともありました。確かに、胃ろうによって必要な栄養が体に入れば、寿命を延ばすことにつながるでしょう。

しかし、どの方法にもメリットとデメリットがあり、一概に「これが良い」「これはダメ」と判断することはできません。

大切なのは、病気や介護の状況だけでなく、これまでの人生で大切にしてきたこと、そしてこれからの人生で何を大切にしていくかという、本人と家族の意思です。

正解を求めるのではなく最善を見つけるために、食べられなくなる前から、家族でお互いの価値観を話し合っておくことが必要です。

「明日地球がなくなるとしたら、最後に何を食べる?」というくらいの軽い気持ちでも構いません。まずは話し合ってみてください。――食べられなくなったとき、あなたはどうしますか?

参考文献

  • 『治療』Vol.102 No.1(2020年)特集「摂食・嚥下障害の意思決定支援」(編集幹事:大浦誠)

執筆者 増田 翼(看護師)

※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。

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