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脳血管疾患の後遺症と「食べる」リハビリテーション ― 自宅でも続けられる支援のかたち

執筆者の写真: 株式会社ネクスト 編集部
株式会社ネクスト 編集部
11 時間前
読了時間: 5分

執筆:増田 翼(看護師)

脳血管疾患による後遺症とは

食べる障害を起こす病気はさまざまですが、特に神経や筋肉の病気によって、口から食べることが難しくなります。

脳血管疾患は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、手足の麻痺や、話す・聞くことの障害が残る病気です。また、尿意が分からなくなって失禁してしまい、おむつが必要になる方も多くいます。さらに、食べる機能を担う脳の部位に病気が起こると、うまく噛めない、飲み込めない、飲み込んでもむせる、といった障害があらわれます。

代表的な脳血管疾患には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」や、血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」などがあります。そのほかにも、交通事故などの強い衝撃によって脳が損傷し、後遺症が残ることもあります。

ただし、脳血管疾患を発症したすべての方が、食べる機能に障害を抱えるわけではありません。また、発症直後は重い後遺症があっても、徐々に改善していく方もいます。

脳梗塞などを起こすと、多くの方は救急車で専門的な治療ができる病院に運ばれます。そこで医師から「脳の血管が詰まっています。脳梗塞ですね」と説明されますが、それだけでは、食べる機能に障害が起こるかどうかは分かりません。

では、どのような脳血管疾患で、食べる機能の障害が起こりやすいのでしょうか。それは、脳の「特定の部位」の病気か、そうでない部位の病気かによって変わってきます。

延髄で脳梗塞が起こるとどうなる?

まずは、「特定の部位」について説明しましょう。

脳には「延髄」と呼ばれる場所があります。延髄は脳のいちばん下の部分で、「食べる」機能のほかにも、「呼吸や心臓のリズムを整える」という、生きるうえでとても重要な役割を担っています。

この部位に病気が起こると、そのまま亡くなってしまう方もいらっしゃいますが、病気が軽ければ一命を取り留めることができます。

しかし、私たちが生きるうえで欠かせない「食事をとる」という行為に、後遺症が残ることがあります。そのほかにも、めまいや声のかすれ、体のふらつきといった症状が出ますが、体の麻痺は比較的少ない方が多いです。

ケース1:リハビリ専門病院でリハビリを行ったAさん

延髄に脳梗塞を発症したAさんは、体調が安定したため、救急搬送された病院からリハビリ専門の病院に転院してきました。

最初の飲み込みの検査では、ゼリーすらのどを通らず、お茶を飲んでもむせてしまう状態でした。

その後、リハビリ専門病院に入院して治療を続けた結果、最終的には奥さんの作ったコロッケを食べられるようになり、歩いて自宅に帰ることができました。

Aさんは入院中のリハビリで食べる楽しみを取り戻すことができましたが、リハビリ病院の多くは入院期間の目安を設けています。ただ、その期間が終わって自宅に退院することになっても、介護保険を利用することで、専門的なリハビリを続けることができます。

ケース2:胃ろうをつくって退院したBさん

Bさんも延髄の脳梗塞によって、食べる機能に障害を負ってしまいました。

仲間とお酒を飲むことが大好きだったBさんですが、残念ながら入院中には口から食べることはかなわず、胃ろうをつくって自宅に帰ってきました。

要介護5の認定を受け、自宅では週2回の訪問看護に加えて、週3回の訪問リハビリテーション、月2回の訪問歯科を利用しています。自宅でも理学療法士や言語聴覚士によるリハビリテーションに加え、看護師も体調を管理しながらリハビリテーションを行っていきました。

訪問歯科の医師が関わることで、自宅でも内視鏡を使った検査を行い、食べ物を安全に飲み込めているかを確認することができます。Bさんは退院から半年でヨーグルトを食べられるようになりました。大好きなお酒を飲むまでには至っていませんが、今もリハビリテーションを続けています。

延髄以外で脳梗塞が起きたケース

「延髄」以外の部位の脳血管疾患で起こる食べる機能の障害は、原則として2回目以降の発症で起こるといわれています。そのため、初めての脳血管疾患では起こりにくいのです。

以前に脳血管疾患を発症したものの、幸い後遺症も少なく、自宅で問題なく生活していた方が、2回目の発症によって、重い食べる機能の障害を負うことがあります。

また、両手足に麻痺が生じることもあります。そのほかにも、「食事に集中できない」「箸やスプーンが使えない」など、食べる動作に支障が出ることがあります。

ケース3:2回目の脳梗塞で食べられなくなったCさん

Cさんは10年前に脳梗塞を発症しましたが、幸い後遺症はなく、自宅で生活していました。しかし、再び脳梗塞を発症してから「食べ物が飲み込めない」「むせる」といった症状があらわれ、口から食べることができないため胃ろうをつくって、自宅での生活を再開しました。

CさんもBさんと同様に、介護保険で訪問看護や訪問歯科を利用し、ペースト状の食事を食べられるまでに改善しました。今では胃ろうをほとんど使わずに生活できています。

あきらめずに、まずはケアマネジャーに相談を

このように、脳血管疾患によって生じる食べる機能の障害には大きく2つのタイプがありますが、40歳以上であれば、どちらも介護保険の対象になります。

入院中に「口から食べることはできない」と言われた方でも、在宅療養を続けていくうちに、口から食べられるようになる可能性があります。

ただし、すべての訪問看護ステーションや訪問歯科が、リハビリテーションに力を入れているわけではありません。また、要介護度によって、利用できるサービスの量(支給限度額)にも上限があります。だからこそ、まずはケアマネジャーに相談してください。

リハビリテーションに強い訪問看護ステーションや訪問歯科の医師を見つけてもらうことで、在宅でも「口から食べること」を目標に生活できるようになるはずです。

執筆者 増田 翼(看護師)

※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。

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