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何種類もの薬、「こんなに飲んで大丈夫?」と不安になったら ― 飲み合わせと重複投与

執筆者の写真: 株式会社ネクスト 編集部
株式会社ネクスト 編集部
11 時間前
読了時間: 6分

執筆:齋藤 直裕(薬剤師)

体の不調があって生活に支障をきたしたり、なぜ具合が悪いのか心配になったりしたときは、診察を受けて原因を調べることになります。原因がはっきりし、それを取り除いて以前の調子に戻れるのであれば良いのですが、治療に時間がかかる場合や、根本的に治すことが難しい場合には、不調をやわらげるために一定期間、薬を使うことになります。根本的な治療が難しい場合は、さらに長い期間、薬を続けることもあります。

日本では、多くの方が長寿となりました。年齢を重ねると、体の不調はひとつだけでなく、さまざまな病気を同時に抱えることも増えてきます。それにともなって、使う薬、使い続ける薬も増えていきます。

何種類も薬を飲んでいると、「こんなに飲んでいて大丈夫なんだろうか」と、病気の治療よりも薬そのものに不安を感じることはないでしょうか。実際に、たくさんの薬を飲んでいて心配になったり、「こんなに飲みきれない」と薬局に相談に来られたりする方もいらっしゃいます。

複数の診療科の受診で起こる「飲み合わせ」と「重複」の問題

「薬が多い」と相談される方の多くは、いくつもの診療科を受診しています。病気がひとつではないため、たとえば心臓の機能が悪くなって循環器科にかかりながら、膝が悪く痛みもあるので整形外科にもかかっている、といったケースです。

保険診療では、診断に対して使用される薬に一定のルールがあり、多くのデータや実績にもとづくガイドライン(診療の手引き)などに沿って処方されています。「薬が多くて心配」というときの大きな問題は、実は薬の数よりも、薬と薬の間で起こる薬物相互作用(やくぶつそうごさよう)と呼ばれる、体にとって好ましくない反応があるかどうかです。

薬の説明書を見て、自己判断で飲むのをやめてしまうと、不調が改善しなかったり、治療効果が期待できなかったりするだけではありません。服用をやめていることを知らずに医師が診察すると、「薬の効果が出ていない」と判断されてさらに薬が追加になり、自宅に飲まない薬がどんどん増えていく――という悪循環に陥る可能性もあります。

まずは自分で判断せずに、薬についての心配を医師・薬剤師に打ち明けることが第一です。

薬の飲み合わせ(薬物相互作用)とは

体の中に何種類もの薬があると、ある薬の作用に別の薬が影響を与えてしまうことがあります。これを薬物相互作用といいます。いわば、薬どうしのケンカのようなものです。ある薬がもうひとつの薬の作用を打ち消してしまうこともあれば、別の薬の作用を強めてしまう(副作用が出やすくなる)こともあります。

たとえば、循環器科で不整脈(心拍のリズムが規則正しくない状態)が見つかったとします。不整脈があると血液の流れが悪くなり、血管の中に「血栓」と呼ばれる血の塊ができて血管が詰まってしまうことがあります。これを防ぐために、血液をサラサラにする「ワルファリン」という薬が処方されることがあります。

ケガをして血が出ても、出血がいつまでも続くことはなく、皮膚で血が固まって止まりますね。いわゆる「かさぶた」です。人間に備わっている血を固める仕組みはひとつではなく、さまざまな要因が働いて血を止めています。そのひとつに、ビタミンKを使って血を固める仕組みがあります。ワルファリンは、このビタミンKの働きを邪魔することで血液をサラサラにする薬です。

一方、ビタミンKには骨を丈夫にする働きもあります。メナテトレンと呼ばれる薬はビタミンK2の製剤で、骨粗しょう症などで骨を丈夫にするために処方されることがあります。

では、ワルファリンを飲んでいる方に、整形外科で骨折予防のためにビタミンK2の薬が処方されたら、どうなるでしょうか。実は、ワルファリンの血液をサラサラにする効果が、期待できないほどに低下してしまいます。飲んでいても、血栓を予防して血管が詰まるのを防ぐ効果は期待できなくなってしまうのです。

診察の前には必ず「現在治療中の病気や、服用している薬はありますか?」と確認されます。自分の情報を正しく伝えることができれば、こうした薬どうしの相互作用は、事前のチェックで防ぐことができます。

「重複投与」とは

不要な薬が増えてしまう原因は、もうひとつあります。ここでも循環器科と整形外科を例に考えてみましょう。

循環器科でよく処方される低用量アスピリン腸溶錠は、血小板が集まって固まるという血液凝固の仕組みを抑えることで、血液をサラサラにする薬です。ただし、胃などの消化管に負担をかけることがあります。胃の中などで出血した場合には血が止まりにくく、痛みもないため出血に気づかないこともあるので、胃薬をあわせて飲むことが推奨されています。

そして、整形外科でよく処方される痛み止めにも胃を荒らすものがあり、痛み止めと胃薬がセットで処方されることがあります。

その結果、2つの診療科から「胃薬」が出て、薬の量が増えてしまう――。これを重複投与(ちょうふくとうよ)といいます。胃薬の場合は副作用などの心配は比較的少ないのですが、同じような薬をいくつも飲むことになるため、本来は飲まなくてもよい薬の数が増えてしまいます。

ただし、同じ胃薬でも作用の異なるもので、一緒に飲む必要がある場合もあります。自己判断で薬を中止したりせず、不安を感じたときは必ず相談してください。

「薬が多い」と感じたときが、見直しの良いきっかけ

「もう何十年もこの薬を飲んでいます」というお話をうかがうことがあります。ただ、年月が経てば体そのものも変化し、薬の効き方が変わっていることがあります。また、より良い薬が出ているかもしれません。

医療を受ける際には、正確な情報を専門家に伝えることが大切です。薬局でお薬手帳を活用することも、よい予防策になります。

かかりつけ薬剤師をもちましょう

飲んでいる薬に疑問や不安を感じたときは、薬の専門家である薬剤師に相談してください。さらに、「かかりつけ薬剤師」をもつのもおすすめです。

かかりつけ薬剤師とは、ひとりの患者さんを専属の薬剤師が担当し、薬の情報をひとつの薬局でまとめて把握しながら、継続して管理していく制度です。薬剤師であれば誰でも担当できるわけではなく、保険薬局での3年以上の勤務経験や、研修を受けて学び続けている実績などの条件を満たした薬剤師が担当します。利用には患者さんの同意が必要で、通常より自己負担額が少し増えます(金額は保険の負担割合や診療報酬の改定によって異なります)。

処方薬や市販薬などの情報をまとめて把握してもらうことで、重複や飲み合わせのチェックに加え、薬の効果や副作用も継続して確認してもらえるため、安心して薬を飲むことができます。

執筆者 齋藤 直裕(薬剤師)

日本大学薬学部薬学科卒業。公認スポーツファーマシスト。在宅医療に積極的に取り組む訪問薬剤師(執筆時点)。

※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。

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