上手に食べるためにも「出す」ことが大切 ― 便秘や食道の病気が食欲に影響することも

執筆:増田 翼(看護師)
飲み込んだ食べ物は、食道を通って10秒ほどで胃に届きます。
食道は1本の管のようになっていて、その周りを筋肉が包み込んでいます。この筋肉が動くことで、食べ物は胃まで運ばれます。
胃にたどり着いた食べ物は胃酸によって消化され、その後、腸で吸収されて、残りが便として体の外に出されます。便が出ないとおなかが張って食欲が出ない――ということは、私たちもしばしば経験しますよね。
今回は、「飲み込んだ後」の支援についてお話しします。
事例1:食べる量が減ったDさん ― 原因は便秘だった
訪問看護でうかがっているDさんは、レビー小体型認知症を患い、自分で話すことや動くことが難しくなっていました。
飲み込む機能も低下していたため介護食を食べていましたが、奥さんから「最近、食べる量が減った」と話があり、食べる様子を見せていただきました。Dさんは介護食をむせることなく食べており、食べること自体には特に問題はないようでした。
しかし、おなかが張っていて、腸の音を聴くと動きが悪い印象でした。奥さんに最後に便が出たのはいつかをうかがうと、1週間以上出ていないことが分かりました。
そこで、食べられない原因は便秘ではないかと考え、排便の援助をさせていただいたところ、食欲が回復し、以前と同じように食べられるようになりました。
食欲の低下は「出す」ことの問題かもしれない
食欲がなくなった、体重が減ったといった状況が続くと、飲み込む機能が低下したのではないかと考えがちです。しかし、食べた後の流れが悪いことによっても、同じような状況が引き起こされます。
便秘にはさまざまな原因がありますが、レビー小体型認知症の方は特に胃腸の動きが悪くなり、便秘になりやすい傾向があります。また、寝たきりの方も、腸の運動(蠕動〈ぜんどう〉運動)が低下することで便秘になることがあります。
便通を整える食事のポイント
食べ物の流れを良くするためには、便通を整えることが大切です。そのためにはバランスの良い食事を心がけることが基本ですが、食物繊維や乳酸菌をとることで腸の働きがよくなり、便秘の予防につながります。
食物繊維:野菜やきのこ類、海藻などに豊富に含まれています。
乳酸菌:ヨーグルトなどで手軽にとれます。間食としてよりも、食後のデザートとして食べるのがおすすめです。空腹時に食べると、胃酸によってせっかくの乳酸菌が死んでしまいやすいからです。
事例2:「食事が食べにくい」と体重が8kg減ったEさん
ただし、便通以外にも問題が隠れていることがあるので注意が必要です。
Eさんは「最近、食事が食べにくい」と話し、食欲がわかずに体重が8kgも減ってしまいました。高血圧の持病はあるものの、飲み込みの機能が落ちるような病気にかかったことはありませんでした。
心配した担当の看護師から「飲み込みの機能が落ちているようなので、相談に乗ってほしい」と依頼を受けて話を聞くと、食べ物を噛むことに問題はなく、食べているときにむせる様子もないようでした。しかし、のどのあたりにつかえる感じがあり、それが原因で食事をとるのが難しくなっていたようです。
つかえ感の原因は「食道の病気」だった
原因として考えたのは、食道の病気です。食道を狭くするような病気や、食道の動きが悪くなるような病気にかかると、食べ物を飲み込んでも、うまく胃まで運べないことがあります。
Eさんに病院での精密検査を提案したところ、検査の結果、やはり食道に腫瘍が見つかり、それがつかえ感の原因になっていました。
食道が狭くなったときの食べ方の工夫
改善策として、細くなった食道でも食べ物が通りやすいよう、一口の量を少なくすること、よく噛むことを提案しました。そうすることで、Eさんは大好きなラーメンも食べることができていました。
ただし、一口を少なくしたり、よく噛んだりすることを続けていると、噛む回数や飲み込む回数が増えるため、食べること自体に疲れを感じてしまい、十分な栄養がとれないことがあります。そこで補助栄養剤を提案し、少ない量でも栄養を補給できるようにしました。
逆流による誤嚥にも注意を
食べ物の通り道である消化管にがんなどの腫瘍があると、流れが滞って口まで逆流し、誤嚥してしまうことがあります。また、一度胃まで入った食べ物が逆流すると、胃液を含んでいるため肺を大きく傷つけ、重症化しやすいので注意が必要です。
逆流を予防するためのポイントは次のとおりです。
おなかを圧迫しない服を選ぶ
食後は、おなかに力を入れる動作を避ける
ベッドをリクライニングして食事をとる方は、食後30分程度はベッドを上げたままにしておく
寝るときも少しベッドを上げておくと、寝ている間の胃食道逆流を予防できる
食事はよく噛んで食べることで、食べ物がのどを通りやすくなるとともに、腸の運動も促され、便通を整える効果もあります。普段からよく噛んで食べることを意識してください。
誤嚥を防ぐために「食べる機能」への関心は以前より高まっていると思いますが、それと同じように「出すこと」も大切です。また、食道の病気は、お酒をよく飲む方、肥満の方、たばこを吸う方に多いといわれています。生活習慣も見直して、何歳になっても食事を楽しめる人生を送っていただきたいと思います。
執筆者 増田 翼(看護師)
※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。




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