噛みにくい食べ物はどう調理する? ― 食べる機能に合わせた調理の方法(噛みにくい編)

執筆:稲山 未来(管理栄養士)
年齢を重ねるにつれて、噛む機能が低下することは皆さんもご存じでしょう。その理由はいくつかあります。
入れ歯を使っているため、力強く噛むことができない
歯周病や口内炎が原因で、噛むと痛みを感じる
口や頬、舌の筋肉が衰え、噛むための力が足りなくなる
唾液が減って、食べ物を舌でまとめることが難しくなる
では、噛むことが難しくなった高齢者はどのようなものを食べているのか、また食べやすくするための工夫についてお伝えします。
噛む力が落ちた人は、どんなものを食べている?
自分の歯が20本以上残っている人と、それより少ない人とで、とっている栄養の量に差があるのかを調べた研究があります。
その研究によると、残っている歯の数が少ない人は、特に肉類や野菜・果物・種実(ナッツ)類の摂取量が少ないことが分かりました。歯の数が少ないため、硬いものや繊維の多い食材は食べにくく、やわらかいパンやご飯からカロリーをとる傾向にあるのです。
食べにくいものは、食べなくてもいい?
肉や野菜などの摂取量が特に少なかったとご説明しましたが、それぞれの食材には健康を維持するために必要な栄養が含まれています。
肉類
肉には、筋肉のもとになるたんぱく質が含まれています。たんぱく質が足りなくなると全身の筋肉が落ち、同じように口やのどの筋肉も落ちてしまうため、さらに噛むことが難しくなってしまいます。
野菜や果物
野菜や果物に含まれるビタミン類には、免疫力を保つ働きがあります。特にビタミンCは歯ぐきを健康に保ち、歯周病を防ぐ役割があります。歯周病で食べにくいからと野菜や果物を食べずにいると、歯ぐきはさらに弱り、歯周病が進行しやすくなってしまうのです。
また、繊維の多い野菜は食べにくいものですが、こうした食品には食物繊維がたっぷり含まれています。食物繊維は便のもとになるので、不足すると便秘になったり、逆に便がゆるくなったりと、排便のコントロールが難しくなることもあります。
食べにくいものは、どうやって食べればいい?
まず大切なのは、入れ歯の不具合や口の中の痛みのために上手に噛めない場合は、歯科医院でその問題を解決することです。これがいちばん大事です。
それでも噛みにくさを感じる場合は、調理の方法を工夫して、必要な栄養をバランスよくとりましょう。
肉の調理
塊の肉は硬くて噛みにくいので、ひき肉や薄切り肉を使ってアレンジしましょう。
唐揚げの代わりに、鶏ひき肉の肉団子
鶏のひき肉で肉団子にすると、やわらかく食べられます。それでも少し硬く感じるときは、肉だねを練るときに豆腐を少し混ぜましょう。豆腐を入れることで、しっとりふっくらとして、さらに食べやすくなります。豆腐の量は、肉の4分の1程度が目安です。
鶏肉の煮物は、片栗粉でしっとり
鍋物などで鶏肉を食べることもありますが、グツグツ煮ていると肉のうまみや脂が溶け出して、パサついてしまうことがあります。パサパサしたものも食べにくいので、工夫が必要です。
鶏肉のパサつきが気になるときは、肉の表面に片栗粉をまぶしてから、だし汁で煮ます。片栗粉で表面がコーティングされるので、肉のしっとり感が損なわれず、表面がつるっとして、唾液が少なくなった方にも食べやすくなります。
炒め物は、薄切り肉で
しょうが焼きなどの炒め物を作るときは、薄切りの肉を使ってみましょう。特に、しゃぶしゃぶ用の豚バラ肉は薄くて適度に脂身もあるので、やわらかく食べられます。料理の手順は変えずに肉の種類を変えるだけなので、とても簡単に工夫できますよ。
野菜の調理
繊維の方向を見極める
玉ねぎをよく見てみましょう。頭の先からお尻に向かって、繊維が通っているのが分かると思います。この繊維に沿って切ると食感を楽しめますが、繊維が口に残ってしまう方は、繊維を断ち切るように切りましょう。

玉ねぎだけでなく、葉物野菜やセロリ、アスパラガスなども、同じように繊維の方向と交差するように切りましょう。
皮をむく
なすやトマトなどは、皮が硬くて噛み切りにくいことがあります。トマトは湯むきに、なすはピーラーで皮をむいてから調理すると食べやすくなります。なすの皮をすべてむくと見た目が変わって味気なく感じるときは、しま模様に一部だけむくだけでも、食べやすさが変わります。
その他の食べにくいもの
噛む力が弱くなってくると、かまぼこなどの弾力のある食材も食べにくくなります。特に原材料にこだわった高級な練り物ほど、しっかりとした弾力があります。食べやすさを優先するなら、スーパーなどで手軽に手に入る練り物のほうが、ふわっとやわらかいことがあります。
いつまでも元気に食べるために
おいしいものをいつまでも元気に食べるには、噛む機能をしっかり維持することが大切です。食べにくいからとやわらかいものばかり食べていると、さらに機能が落ちてしまいます。
また、栄養が不足して食べるための筋肉まで落ちたり、栄養バランスが悪くなって歯周病が悪化したりと、食べられるものが偏るほど、どんどん負のスパイラルに陥ってしまいます。
それを防ぐためには、まず「噛める口」をつくること。痛みや食べにくさを感じたら、まずはお近くの歯科医院に相談しましょう。そして、今の機能でも食べられるものを探して、なるべく肉や魚、野菜もしっかり食べることです。
いつまでもおいしいものを楽しく食べて、元気に過ごしましょう。
執筆者 稲山 未来(管理栄養士)
※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。




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