「介護疲れ」に悩まないためにできること ― 呼吸と自律神経から考える疲労回復のコツ

執筆:市川 塁(理学療法士)
「介護疲れ」という言葉を聞いたことはありますか。読んで字のとおり、介護にともなう介護者の疲れ(疲労)のことです。
介護をしている方の多くは、時間に追われて時間の余裕がない、次から次へとやらなければならないことがあって心の余裕がない、そして体にも疲労が溜まって体力の余裕もない――そんな状態にあるのではないでしょうか。このように、介護疲れの裏にはさまざまな要因が隠れています。
今回は、介護疲れに悩まないために、1日5分でできる「介護疲れを溜めない方法」をお伝えします。疲労が溜まると体にはさまざまな変化が起こりますが、ここでは「呼吸」と「自律神経」に着目し、その変化と解決策についてお話しします。
疲れが溜まると、呼吸が浅くなる
疲労が溜まってくると、呼吸が浅くなっていきます。すると全身に酸素が十分に行き渡らなくなり、体の回復が追いつかずに、さらに疲労が溜まる――という負のループが生まれてしまいます。
そこで、少なくとも1日1回は、深呼吸をする時間をつくることをおすすめします。
おすすめの深呼吸の方法
座った状態で目を閉じ、鼻から大きく息を吸い込みます。そして口をすぼめながら、できるだけ細く長く、口から息を吐き出します。これを3分程度繰り返します。
深呼吸とセットで行いたい胸・肩甲骨まわりのストレッチ
深呼吸の効果を高めるために、胸や肩甲骨まわりのストレッチをセットで行うのもおすすめです。横になって行う方法は次のとおりです。
仰向けに寝る
背中の下に柔らかいクッションを入れる
バンザイの姿勢をとる
この姿勢で3分ほど深呼吸を繰り返す
ぜひ一度試してみてください。3分後には、きっとすっきりすると思います。
気を張り続けると、自律神経が乱れる
介護疲れの背景には、時間に追われて心に余裕がない、という面もあります。気を張り続けることで交感神経が優位になり(副交感神経の働きが低下し)、自律神経が乱れてしまうのです。
自律神経の乱れは、疲労回復と密接に関わっています。自律神経が乱れることで疲労回復の仕組みが妨げられ、疲れが溜まっていきます。
自律神経を整えるカギは「呼吸」
では、乱れた自律神経はどうすれば整えられるのでしょうか。
自律神経は心臓の拍動や腸の働きなどをつかさどっており、基本的に自分の意思ではコントロールできないといわれています。しかし、自律神経の支配を受けながらも、自分でコントロールすることもできる機能があります。それが「呼吸」です。
自律神経が乱れると、「吸う」「吐く」のリズムが崩れたり、呼吸の深さが不安定になったりするといわれています。では、呼吸を利用して自律神経を整えるには、どんな方法があるのでしょうか。ここでは2つの呼吸法をご紹介します。
1. 等間隔呼吸法
乱れた呼吸のリズムを、意識的に整えていく呼吸法です。
4秒かけて吸う
4秒かけて吐く
これを繰り返します。リラックスしたいとき(副交感神経の働きを高めたいとき)は、4秒で吸って8秒で吐くなど、吐く時間を長くする工夫もできます。
2. 片鼻呼吸法
「交代性鼻閉(こうたいせいびへい)」という現象を利用した呼吸法です。鼻の空気の通り具合は、自律神経の働きによって、どちらか一方がやや詰まり気味になっているのが正常だといわれています。詰まっている側は数時間ごとに左右が入れ替わり、この現象を交代性鼻閉と呼びます。これを利用して自律神経を整えるのが片鼻呼吸法です。
やり方は次のとおりです。
右の鼻の穴を指で閉じ、左の鼻の穴から4秒かけて息を吸い、4秒かけて吐く
閉じる鼻を交代し、右の鼻の穴から4秒かけて息を吸い、4秒かけて吐く
これを3分間繰り返す
1日5分、自分の体のために
いかがでしたか。介護疲れを溜めないために、また解消するために、1日5分だけでも自分の体のために時間を使ってみてはいかがでしょうか。
深呼吸
胸・肩甲骨まわりのストレッチ
等間隔呼吸法
片鼻呼吸法
できるものから、気軽に試してみてください。なお、体調がすぐれないときや息苦しさがあるときは無理をせず、医療機関に相談してください。
執筆者 市川 塁(理学療法士)
※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。




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