糖質の働きと上手なとり方 ― 栄養素の働きと摂り方②

執筆:稲山 未来(管理栄養士)
前回は、体をつくる栄養素であるたんぱく質について説明しました。今回は、たんぱく質と同じく三大栄養素のひとつである「糖質」について学んでいきましょう。
糖質は、体を動かすエネルギー
糖質は、私たちが体や脳を動かすときのエネルギーになります。糖質はエネルギーに変わるスピードが速いので、疲れたときに甘いものを食べたり飲んだりすると、みるみる元気になりますよね。
そして、もうひとつの大切な役割が、脳のエネルギーになることです。脳は普段、エネルギー源のほとんどを糖質(ブドウ糖)に頼っています。そのため、糖質が足りなくなると集中力が落ちたり、ぼーっとしたりしてしまうのです。「朝ごはんをしっかり食べましょう」と言われるのも、勉強などに集中するためには、脳にエネルギーが必要だからです。
糖質は、どうやってとる?
糖質は炭水化物の一種で、穀類やいも類、果物、砂糖などに含まれています。「砂糖の甘い成分」と覚えると分かりやすいでしょう。
体を動かすエネルギー源の中心なので、1日にとるエネルギーのうち50〜65%を炭水化物からとるのが理想的とされています。
具体的には、ご飯なら毎食普通盛りを1杯(1日で3杯)程度です。それに加えて、果物からの糖質を1日みかん2個程度、あとは料理に使う砂糖くらいです。
もちろん、ご飯3杯のうち1杯を麺類やパンに変えてもかまいません。3食の食事で、ご飯・麺・パンのいずれか主食になるものを必ずとるように心がけましょう。
糖質が不足すると、どうなる?
では、体のエネルギー源である糖質が不足すると、体は動かなくなってしまうのでしょうか。
体が動かなくなることはありません。糖質が不足したときは、同じく三大栄養素である脂質やたんぱく質が、代わりにエネルギー源として働いてくれるからです。
ただし、脳は脂肪をそのままの形ではエネルギー源として使えないため、糖質が不足すると頭の働きが鈍くなってしまいます。私たちがしっかりと頭を使って考えられるのは、糖質をきちんととっているからなのですね。
糖質のとりすぎは良くない?
とりすぎた糖質は、体の中で分解されてグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられ、体を動かすために使われます。それでもまだ余った糖質は、いざというときのエネルギー源として、体脂肪として蓄えられます。この体脂肪がたくさんついた状態が「肥満」です。
中年期の肥満はメタボリックシンドロームなどと呼ばれ、健康への悪影響が大きいため「やせましょう」と言われますが、高齢者の場合は、一概に脂肪が悪者だとはいえないのです。
なぜなら高齢者は、転倒や、身近な人を亡くした精神的なストレスなど、何かのきっかけで急に食が細くなってしまうことがよくあるからです。若いころよりも空腹を感じにくいため、食事がおろそかになりがちです。
そして、食が細くなったときこそ、この「いざというときの蓄え」である体脂肪が役に立ちます。食事から十分なエネルギーがとれないときに体脂肪を分解してエネルギーを生み出すので、食欲が戻るまでの予備の栄養として活用できるのです。
この予備の栄養がないと、体の中からエネルギーや栄養をどうにか絞り出すことになり、やせて、さらに免疫力が落ちてしまいます。
高齢者は「やせ」より「小太り」のほうが長生きできる?
免疫力が落ちると感染症にかかりやすくなり、感染症にかかると、さらに生活の質が落ちてしまうことが予想できるでしょう。
最近では、この低栄養の状態こそが生活の質を下げる大きなリスクであるとして、高齢者の場合は、やせているよりも、やや太めのほうが健康で長生きできるともいわれています。なお、糖尿病などで食事の管理が必要な方は、主治医や管理栄養士の指示に従ってください。
最後に
大切なのは、糖質は体と脳のエネルギー源であるということです。特に脳は、普段は主に糖質をエネルギー源にしているので、不足しないように、食事の際はご飯・麺類・パンなど、主食になるものを食べるよう心がけましょう。
執筆者 稲山 未来(管理栄養士)
※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。




コメント