食べることの悩みは管理栄養士へ ― 自宅に来てくれる栄養相談の活用法

執筆:稲山 未来(管理栄養士)
突然ですが、自宅で生活している高齢者のお宅を訪問して、食事や栄養の相談に乗ってくれる管理栄養士がいることを、皆さんはご存じでしょうか。いわば、栄養指導の出張サービスのようなものです。介護保険には、こうした管理栄養士によるサービスもあるのです。
今回は、自宅で生活する高齢者の食の悩みを、管理栄養士がどのように解決していくのかについて、ご家族からよく寄せられる相談内容をもとにご説明します。
相談1:食べている食事で足りているのか分からない
年齢とともに少しずつ食べる量が減ってきた。台所に立つのがおっくうで、つい食事の品数が昔より減ってしまった。料理をしなくても簡単に食べられるパンや麺類が増えて、バランスが偏っているのではないか――そんな不安はありませんか。
なんとなく栄養が偏っている気はするけれど、何がどのくらい足りないのか、どのように食べればよいのかが分からないことがありますよね。
管理栄養士は、まずご自宅にうかがって普段の食生活をお聞きします。そして、その内容で栄養が足りているのか、具体的に何が不足しているのかをお伝えします。
高齢者に不足しがちな栄養素は、たんぱく質、ビタミン、食物繊維などです。
たんぱく質の不足
肉などの硬いものは噛みにくくなる方がいらっしゃいますし、焼き魚などは、唾液の量が少なくなった方にはパサパサして飲み込みにくいことがあります。
しかし、たんぱく質は筋肉や皮膚のもとになるため、不足した状態が続くと足腰の筋肉が落ちたり、皮膚が乾燥して傷つきやすくなったりすることもあります。
肉や魚が食べにくいときは、チーズやヨーグルトなどからも手軽にたんぱく質がとれます。肉はひき肉を使って肉団子にする、魚には片栗粉で作ったあんをかけるといった工夫をすると、つるりと口当たりが滑らかになり、食べやすくなります。
ビタミン・食物繊維の不足
ビタミンや食物繊維の不足は、野菜を食べる量が減ると起こります。
ビタミンには主に体の調子を整える働きがあるため、不足すると免疫力が落ちて風邪をひきやすくなったり、疲れが溜まりやすくなったりします。
食物繊維は主にお通じのもとになるため、不足すると便秘になりやすくなります。そうでなくても、高齢者は腸の動きが鈍くなって便秘になりやすいので注意が必要ですね。
野菜を食べる量が減ってしまうのは、繊維が多くて噛みにくいこともありますが、一度に作る料理の量が少ないため、生野菜を買っても使いきれないのではと心配して購入を控える方もいらっしゃいます。高齢のご夫婦の2人暮らしや、おひとりで生活されていると、どうしても「使いきれない」という悩みはついて回りますね。
そんなときに便利なのが冷凍野菜です。最近は冷凍野菜の種類が増え、ほうれん草やオクラ、なすなども販売されています。コンビニやスーパーの冷凍コーナーにあるので、ぜひチェックしてみましょう。
冷凍野菜なら長く保存でき、傷む心配もありません。いつものみそ汁に冷凍野菜を少し加えるだけでも、ビタミンや食物繊維の補給になります。ぜひ試してみてください。
相談2:噛むこと・飲み込むことが苦手になってきたが、どうすれば食べやすくなるか分からない
先にも説明したように、噛む力が弱くなると、硬い食べ物や繊維の多いものは食べにくくなります。しかし、食べにくいからといって食べないでいると栄養が偏ってしまうので、できる限り調理方法を工夫して、偏りなく食べていきたいものです。
訪問のサービスでは、管理栄養士が実際にご自宅にうかがい、そのお宅にある調理器具を使って調理の方法を実演します。
たとえば、肉が少し噛みにくくなってきた方には、口の中で粒が残ったり、べたついたりしないような工夫が必要です。一般的には、介護用のゲル化剤(いわば、飲み込みやすい特殊なゼラチンのようなもの)を使って、適度な固さに固めることもあります。
長年料理をされてきた方でも、介護用の食事を作り慣れている方はあまりいらっしゃいません。どのように調理・加工すれば安全においしく食べられるのか、そのサポートも管理栄養士が行います。
管理栄養士の支援を受けるには
ここまで読んで、「ぜひ管理栄養士に相談してみたい」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
これは介護保険の「居宅療養管理指導」というサービスで、主治医の指示にもとづいて行われます。まずは担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
もし「近くに訪問できる管理栄養士がいない」と言われた場合は、各都道府県にある「栄養士会」に相談してみるのも一つの方法です。栄養士会は、管理栄養士によるさまざまなサービスに関わっている団体です。
お住まいの地域の栄養士会は、インターネットで簡単に探すことができます。連絡をとって、ご自宅まで来てくれる管理栄養士がいるかどうか確認してみましょう。近くにいなかったとしても、サポートしてくれる管理栄養士を探してくれます。
まとめ
管理栄養士という職種は、あまりなじみがないかもしれませんが、食や栄養に関わることを専門に扱う職種です。そして何よりも、食事に関わる不安を取り除き、どうすれば食事を楽しめるのかを一緒に考えていく職種です。食事のことで悩んだときは、ぜひ思い出してみてください。
執筆者 稲山 未来(管理栄養士)
※本記事は、医療・介護の専門職による寄稿を当社編集部で再編集したものです。内容は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、症状や状況には個人差があります。具体的な判断は、かかりつけの医師・歯科医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。




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