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死後硬直と口元の整え方、ご遺体の変化を抑える環境づくり ― はじめてのエンジェルケア②

執筆者の写真: 株式会社ネクスト 編集部
株式会社ネクスト 編集部
11 分前
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音声:VOICEVOX:九州そら

医療・介護の事業者向けに当社が行っている「エンゼルケア講習」の内容を、全3回の無料コラムで解説しています。第2回は、講習でもっとも質問の多い死後硬直と、口が開いてしまうときの整え方、そしてご遺体の変化を抑えるための環境づくりを扱います。

第1回でお伝えしたとおり、ご遺体の変化は、いったん始まると止められないものが多くあります。今回の内容は、どれも「変化が始まる前にできること」です。

死後硬直は「いつ・どのくらい」が一概にいえない

死後硬直は、筋肉の中の乳酸が関係しているともいわれますが、どんな人にどのくらい強く、どのくらい長く出るのかは、はっきりとはわかっていません。現在よくいわれているのは、筋肉の量によって、硬直の強さや、始まる・終わるタイミングが変わるということです。ただ、ご高齢の方でも一人ひとり違い、一概にはいえないというのが現場の実感です。

そのため、硬直を前もって防いだり、硬直が解けるのを待ったりするのは、あまり現実的ではありません。

  • 硬直が解ける仕組み:きつく縛っていたひもがゆるむようなものではなく、筋肉の細胞が分解されていくことで解けていく。硬直が解けてくるのは、ご遺体の変化が進んでいるサインでもある

  • 季節による違い:冬より夏のほうが、硬直が早く解ける傾向がある

  • 硬直の順番:硬直は上から順番に始まるため、顎(あご)は比較的早い段階で硬くなる

口が開いてしまうときの整え方

よくある質問が、「亡くなった後に口が大きく開いてしまう方には、どう対応したらよいか」というものです。硬直がまだ始まっていなければ、口は閉じてあげたほうが、ご家族が対面したときの印象がよくなります。

  • 基本の方法:タオルを丸めて顎の下に当て、口を閉じた状態を保つ。多くの現場で行われているこの方法で問題ない

  • ひと工夫:顎の骨全体を上に持ち上げるようにすると、本来の顔の形に近づく。タオルを顎の下に当てるだけでなく、首に巻くようなイメージで当てるとよりよい

一方、施設やご自宅で、呼吸が止まっていることに気づくのが遅れた場合などは、すでに硬直が始まっていることもあります。口だけでなく、手などが硬直してしまっているケースもあるでしょう。硬直が始まってしまった部位は、無理に動かさず、葬儀社に任せるのがいちばんです。

納棺師は口を閉じるときに、ご遺体用の接着剤を使うことがあります。それだけ難しい処置なので、現場で無理をする必要はありません。

「あごバンド」をおすすめしない理由

口を閉じるために、ひらひらの飾りがついたゴム製のバンド(あごバンド)を使う事業者もあります。葬儀社から受け取って使っているところもあるかもしれません。ただ、このバンドは基本的におすすめしていません。

腕に輪ゴムをはめてから外すと、しばらくゴムの跡が残ります。生きている体なら、時間がたてば自然に元に戻ります。しかし、亡くなった方の体は元に戻りません。ゴムでぎゅっと締めつけると、しわとゴムの跡がなかなか消えず、納棺師が処置をするなかでも、いちばん苦労するポイントといっても過言ではありません。口を閉じるときは、先ほどのタオルの方法をおすすめします。

ご遺体の変化を抑えるために:室温と乾燥

ご遺体の変化を抑えるうえで、とても大切なのが室温と乾燥です。葬儀社の現場で実際にあった例をもとに、気をつけたい点を紹介します。

  • 夏場の冷房の入れ忘れ:施設によっては、亡くなった方のための部屋に移ることがあります。施設全体で空調が効いていると、空調の入っていない部屋の扉を開けても暑さに気づきにくく、冷房を入れ忘れてしまうことがあります

  • 直射日光:部屋の雰囲気が暗いからと、ご家族に気を利かせてカーテンを開けると、ご遺体に直射日光が当たってしまうことがあります。生きている人なら暑くて寝返りを打ちますが、亡くなった方は動けないため、日光が当たり続け、肌が赤く変色してしまいます。夏場に限らず注意が必要です

  • 冬場の暖房器具:ベッドのマットレスには、温める機能がついていることがあります。床に布団を敷いている場合も、ホットカーペットや電気毛布が使われていることがあります。これらが入ったままになっていると、ご遺体の変化がとても早まります。施設だけでなく、ご自宅でも同じです

  • 窓の開けっ放し:天気がよく暖かい日に、空気を入れ替えようと窓を開けると、外から虫が入ってきて、ご遺体の体の中に入り込んでしまうことがあります。虫が大量に発生したケースもあります

  • ペット:ご自宅では、犬や猫がご遺体の顔をなめてしまうことがあります。特に猫の舌はざらざらしているため、弱くなった皮膚がむけてしまうことがあります。ご家族のお気持ちもありますが、ご遺体のそばではなめないように、ひと言お伝えいただけると安心です

どれも、少しの気配りで防げることです。室温を低めに保ち、直射日光と保温器具を避け、窓を閉めておく。これだけでも、お別れまでのお姿を守ることにつながります。

第2回のポイント

  • 死後硬直の強さや時期は、筋肉の量などによって変わり、一概にはいえない。硬直を防いだり、解けるのを待ったりするのは現実的ではない

  • 硬直が解けるのは細胞の分解による。夏のほうが早く解けやすい。硬直は上から始まり、顎は早い段階で硬くなる

  • 口は硬直の前に閉じる。タオルを顎の下に、首に巻くようなイメージで当て、顎の骨全体を持ち上げる。硬直が始まった部位は無理をせず葬儀社に任せる

  • ゴム製のあごバンドは、しわと跡が残りやすいためおすすめしない

  • 室温と乾燥が大切。冷房の入れ忘れ、直射日光、暖房器具、窓の開けっ放し、ペットに注意する

次回(第3回)は、葬儀社がどのようにご遺体を冷やしているかと、含み綿・着替え・顔剃り・体液への備え・メイクのポイントを紹介します。

はじめてのエンジェルケア(全3回)

あわせて読みたい:エンジェルケア実務研修(全8回)

シリーズ全体は、マガジン「エンジェルケア実務研修(全11回)」からまとめてお読みいただけます。

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この記事は、noteの無料連載「はじめてのエンジェルケア(全3回)」でも公開しています(noteで読む)。noteでは、実務研修とあわせてマガジン「エンジェルケア実務研修(全11回)」にまとめています。

※本記事は、株式会社ネクストの「エンゼルケア講習」の内容をもとに、一般的な考え方をまとめたものです。実際のケアは、医師の指示、施設の手順書、最新の法令や行政の指針に従ってください。研修のご依頼・ご相談は、お問い合わせフォームからお寄せください。

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