入院は「終活」の入口 ― 退院支援の仕組みと、家族が早めに確認したい5つのこと

高齢のご家族が入院したとき、多くの方は「まずは治療が終わってから考えよう」と思われるのではないでしょうか。ところが実際には、入院をきっかけに体力や認知機能が低下し、退院後の暮らし方を短い期間で決めなければならない場面が少なくありません。当社の研修テキストでも、入院は介護・住まい・お金の相談が一度に始まる「本格的な終活の入口」として位置づけています。
入院患者の4人に3人が65歳以上
厚生労働省の患者調査(2023年)によると、調査日1日あたりの推計入院患者のうち、65歳以上が75.5%を占めています。また、受け入れ条件が整えば退院できる65歳以上の入院患者も1割余り(11.1%)にのぼります。退院後の「暮らしの場」をどう確保するかは、ご本人とご家族だけでなく、医療の現場にとっても大きな課題になっています。
病院が早めの退院を求める理由
急性期の入院医療の多くは、病名と治療内容ごとに1日あたりの点数が決まる包括払い(DPC制度)で支払われています。入院期間が一定の期間を超えると1日あたりの点数が段階的に下がるため、病院には早期の退院を進める経済的な理由があります。
そのため多くの病院には「地域医療連携室」などの退院支援の部署があり、退院調整看護師や医療ソーシャルワーカー(MSW)が、退院後の生活の場を患者・家族と一緒に考えます。困ったときは、まずこの窓口に相談することが大切です。
入院中に家族が確認しておきたい5つのこと
1. 退院予定日と、退院時の身体の状態
いつ頃の退院を想定しているのか、そのときに歩行・食事・排泄などがどの程度できる見込みかを確認します。回復期リハビリテーション病棟に転院する場合、入院できる期間には上限があり、脳血管疾患は最長150日(重い場合は180日)、大腿骨の骨折は最長90日が目安です。退院予定日から逆算して準備を進めましょう。
2. 医療処置の有無と頻度
点滴、たんの吸引、胃ろう、インスリン注射、在宅酸素など、退院後も続く医療処置があるかを確認します。処置の内容・回数・時間帯・誰が行うかによって、受け入れ可能な住まいが大きく変わります。研修を修了した介護職が行えるのはたんの吸引や経管栄養などに限られ、インスリン注射は看護師等が行います。夜間に看護職員がいるかどうかが、住まい選びの分かれ目になることも少なくありません。
3. 要介護認定の申請状況
まだ要介護認定を受けていない場合は、早めに市区町村へ申請しましょう。結果は原則として申請から30日以内に通知されます。介護度は、利用できるサービスや住まいの選択肢、費用に直結します。
4. 退院後の生活の場の選択肢
自宅に戻って在宅サービスを利用するのか、介護老人保健施設でリハビリを続けるのか、介護付き有料老人ホームなどへ入居するのか。ご本人の希望と身体の状態、ご家族の介護力をふまえて、複数の選択肢を比較します。
5. 費用の見通しと支払い方法
医療・介護・住まいの費用は、最終的に「お金の問題」に行き着きます。年金収入や預貯金でどのくらいの期間支払えるのか、誰の口座から支払うのかを整理しておきましょう。ご本人の判断能力が低下している場合は成年後見制度の利用が必要になることがあり、選任までに数か月かかることもあります。
「急な退院」に慌てないために
入院は突然やってきます。だからこそ、元気なうちから住まいやお金について家族で話し合っておくこと、そして入院したら早い段階で病院の相談窓口とつながることが大切です。当社では、入退院を起点とする相談の流れや住まい探しの実務を体系的にまとめた研修テキストを発行しています。
※本記事は2026年10月時点の制度・統計にもとづく一般的な解説です。個別の判断は、医療機関・行政・専門家にご確認ください。

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